会長挨拶 第58期

第58期会長就任にあたって

このたび第58期の会長を拝命しました東京大学の小紫公也です。就任にあたりまして一言ご挨拶を申し上げるとともに、学会の目指す方向性について考えを述べさせていただきます。

本学会は、その前身である日本航空学会の設立から数えて92年の歴史を有しております。そして航空宇宙は長らく世の中で最先端の技術であり、未来を拓く学問でありました。本学会はその定款において、「航空宇宙に関する学理および応用の研究について情報交換の場を提供してその進歩普及をはかり、もって学術の発展に寄与する」と謳い、その目的のために学術講演会の主催や、部門活動、出版事業等を通じて技術情報提供やアイデアの交換・議論、共同研究等を検討する場を提供し、航空宇宙分野の発展に大きく貢献して参りました。
現代の航空宇宙技術は、航空機輸送や各種人工衛星サービスといった社会基盤へと成長し、さらに先端技術が新ビジネスを生み、新ビジネスが更なる技術開発を必要とする時代となりました。航空宇宙産業は製造業の中でも特に付加価値および雇用創出力が高く、加えて昨今の衛星通信や地球観測などの市場急拡大で、日本の経済成長のエンジンとしての期待も高まっております。そのような社会的・経済的背景の下、日本航空宇宙学会は約3,500人の正会員うち半数以上を企業に所属する会員が占め、まさに産と学が一体となった学術団体となっております。そして今日、先端技術の「社会実装」、および航空宇宙産業の成長の基となる「人材育成」について、本学会への期待が増してまいりました。
まず「社会実装」について、当学会の担う役割は少なくないと考えます。最先端の技術・アイデアを供給し続けることが学術界の本務でありますが、最近の主催講演会では、それらに加えて法整備や資金調達などを議論したり、政府の方を招いてパネルディスカッションを企画したりしております。そして技術の社会実装を加速する上で重要なのは、政府と共に日本の将来ビジョンを描くことであります。理事会はここ数年、政府とのパイプ創りに取り組んで参りました。従来の将来ビジョン提言に加え、学会と政府双方向の綿密でスピーディーな連携が取れるパイプ創りを目指し、分野横断連携・開拓部門委員会をインターフェイスとして、内閣府をはじめとする関係省庁・部署と、学術的専門家を擁する本学会各部門委員会を結び、政府に持続的に情報をインプットできる、相互に役立つ体制づくりを進めてまいります。部門委員会活動は会員皆様のボランティアによって成り立っておりますが、未来社会を創る、社会実装を加速するという大義をご理解の上、積極的にご協力いただけますと幸いです。
もう一つの学会の重要な役割は「人材育成」です。急速に進む少子化や熟練技術者の大量定年退職などの慢性的な人材不足の中、航空輸送の分野では、パイロットや航空機整備士の不足が今後10年で危機を迎えるとの懸念があります。また、AIスペシャリストなどの他の産業分野との人材の取り合いなどが状況をより深刻なものとしています。そのような中で、空や宇宙にあこがれる若人を育て、航空宇宙業界に導くことは、本学会のひとつの大きな使命であると考えます。本学会はすでに約1,500人の学生会員を擁しており、航空宇宙工学系の学科およびコースを有する大学、高専の学生賞表彰や、講演会・シンポジウムでの優秀講演賞、優秀発表賞の表彰、全日本学生室内飛行ロボットコンテスト、さらには2022年にスタートしたジュニア会員制度を通じて若手人材の育成に取り組んでまいりました。一方で、未だ「人材育成」は学会の付随的な業務の位置づけであり、制度的・財務的にしっかりとした体制がとれておりません。まずは定款に新たに「人材育成」を目的として加え、ジュニア会員だけでなく、教育を主務とされている学校の先生方にも学会活動に参画いただき、共に人材育成に取り組んでいけるとよいと考えます。さらに、ジュニア・学生会員同士の交流、コンテスト事業や国内外の学会参加補助、表彰懸賞などの費用を工面できるような財務的仕組みを学会内で組みたいと考えます。
その他、事務局運営の安定化、財政力強化、講演会開催業務効率化、出版事業・情報発信・人や技術の懸賞・会員交流の活性化、他組織との協働など課題は多岐に渡ります。本期理事の面々と分担・協力して取り組んで参りますが、会員各位のご参画なしでは成り立ちません。皆様の御支援、御協力を賜れますよう、よろしくお願い申し上げます。